一人暮らし経験と留年の関連性の調査

こんにちは。初めましての方は初めまして。ご覧いただきありがとうございます!
本サイト、「数的処理の穴場」を運営しておりますモクセイと申します。

前回は、9人の男女が注文したメニューを推測する問題をやりましたね。
判断推理のあらゆる分野の中でもとりわけ重要なポジションにある、順序関係の問題です。
より多くのアプローチ法を学ぶ意味でも、まだの方はぜひ挑戦されることをおすすめします。
解いたら復習を忘れずに。
復習ではまず解法の流れを確実に暗記した上で、解き直しをして覚えた解法が自分の力として活用できるかどうか、腕試しをしてみてください。
解き直しでもし手が止まったら、今度はそこを完全に理解するつもりで解説を読み込みましょう。
こうしたプロセスを経てこそ、本試験に必要な応用力が磨かれます。
ぜひ、解き直しを日常の学習に取り入れて、初見の問題をクリアする喜びを味わってみてほしいと思います。

復習がバッチリな方は、本日の問題へ参りましょう!

本日の演習問題

ある大学では、自立心と学業成績の関連性を調べるため、一人暮らしの経験および入学以来の留年経験の有無を回答させる調査を行っている。ある年の学生について、昨年度と今年度の調査結果は次表のとおりであった。ただし「今年度」の調査は、退学した者を除き、「昨年度」に回答した全ての者が対象となるものとする。

自立心と学業の関連性調査

昨年度に調査対象であった者のうち、5人が今年度の調査時点で退学していたため、今年度の調査は昨年度の調査対象者からこの5人を除いた集団を対象に行った。次のことが分かっているとき、確実に正しいといえる記述はどれか。

  • 調査結果を昨年度と今年度で比べると、一人暮らし経験のある者の人数は15人増加し、一人暮らし経験も留年経験もない者の人数は20人減少した。
  • 退学した5人の昨年度の調査結果として、うち1人は一人暮らし経験も留年経験もあったが、残りの4人はいずれも一人暮らし経験がなかった。
  1. 今年度の調査対象者の数は100人以下であった。
  2. 退学した5人のうち、一人暮らし経験も留年経験もない者は2人以下であった。
  3. 昨年度の調査において一人暮らし経験も留年経験もなかった者のうち、今年度の調査において一人暮らし経験があった者は5人以下であった。
  4. 今年度の調査において、昨年度の調査から留年経験の有無に変化のあった者は、退学した者を除いて11人以下であった。
  5. 今年度の調査において、昨年度の調査から一人暮らし経験の有無と留年経験の有無の両方に変化のなかった者は、89人以上であった。

一人暮らしの経験と留年経験の有無の関係を調査した問題です。
表はパーセンテージなのに対し、一つ目の条件は人数ベースで与えられています。
どちらかに統一したいですね。
以下、詳しい解説になります。
回りくどい説明が嫌な方は、一番下に略解としてコンパクトにまとめてあるので、そこだけ読んでいただくのでも大丈夫です。

それではスタート!

詳しい解説

選択肢を読むに、調査結果を割合(パーセンテージ)ではなく人数で表す必要があるのだと判断します。
調査結果の表をもとに、各ブロックの人数を割り出しましょう。
表は割合(パーセンテージ)で与えられているので、調査対象者の全数が分かればOKですね。

昨年度の調査対象者の人数を\(x\)とすると、昨年度の時点で一人暮らしの経験があった者は\(0.6x\)
一方、今年度の調査対象者の人数は\((x-5)\)なので、今年度の一人暮らし経験のある者の人数は\(0.75(x-5)\)

条件「調査結果を昨年度と今年度で比べると、一人暮らし経験のある者の人数は15人増加」より、次式が成り立ちます。

\[
0.75(x-5)-0.6x=15 \\
∴ x=125
\]

よって、昨年度の調査対象者は125人、今年度の調査対象者は120人だったことになります。
これより、与えられた表の情報を人数に置き換えると次のようになります。

調査結果(人数)
調査結果(人数)

数字を埋める手順としては、まず与えられた表から「計」の項目を割り出します。
昨年度については、そこから「留年あり」の内訳をもとに、一人暮らし経験「あり」と「なし」の人数を求め、それぞれ「計」から引き算すればOKです。
今年度については、さらに条件「(今年度の)一人暮らし経験も留年経験もない者の人数は20人減少」を使えば芋づる式に求められます。

以下、この表をもとに、選択肢の正誤を一つずつ検討します。

選択肢1について
今年度の調査対象者は120人なので、誤りです。

選択肢2について
退学した5人のうち、「いずれも一人暮らし経験がなかった」4人について、留年経験の有無は分かりません。
つまり、4人とも留年経験がない可能性もあるので、誤りです。

選択肢3について
一人暮らし経験のある者の人数を比べると、昨年度から今年度にかけて15人増えています。
(厳密には、退学した1人を加えて16人)
この15人の出どころは、昨年度において一人暮らし経験がなかった者です。
留年経験の有無は問わない(=どちらでもよい)ので、15人全員が留年経験のない者だった、というケースも考えられます。
したがって、「5人以下」というのは必ずしも正しくないので、誤りです。

選択肢4について
留年経験の有無に変化があった者が最も多くなるケースは、退学した5人全員に留年経験があったケースです。
この場合、昨年度の50人から5人を除いた45人が、今年度に60人となっていることから、留年経験の有無に変化があった者は15人となります。
したがって、「11人以下」というのは必ずしも正しくないので、誤りです。

(本番なら消去法で5が正解と判断してOKですが、ここでは5が本当に正しいのか、検討します)

選択肢5について
昨年度から今年度への人数の変化を見るに、まず昨年度の時点で一人暮らし経験も留年経験もあった40人は変化のしようがありません。
(退学した1人を除いて39人)
加えて、今年度に一人暮らし経験も留年経験もないと回答した20人も、昨年度から変化がないまま今に至ったのだと考えられます。
(ここまでで39+20=59人)

いま知りたいのは、変化がなかった人数の最小値(「89人以上」という表現より)なので、可能な限り多くの人に変化があったケースを想定しなければなりません。
それがどんな場合か、以下でもう少し具体的に考えてみましょう。

変化のなかった人数が最小となるとき
変化のなかった人数が最小となるとき

図は、昨年度および今年度の人数の表から情報を一部抜粋したものです。
便宜上、各ブロックを「壱」〜「肆」と名付けました。

表によると、「壱」の人数は昨年度から10人増えています。
この10人の出処が全て「肆」であるケースを考えてみると、10人の移動のし方は大きく2通りあります。

一つは「肆から直に壱へ移るルート」です。
これは昨年度の時点で一人暮らし経験も留年経験もなかった10人が、今年度になって両方「あり」と回答したケースであり、全体で変化があった者の人数は10人となります。

もう一つは「肆から弐(または参)を経由して壱に至るルート」です。
これは昨年度に一人暮らし経験も留年経験もなかった10人のうち6人が「弐」に移り、かつ元々「弐」にいた別の6人が「壱」へ移るケース(「参」を通るルートも同じ)になります。
この場合、全体で変化があった者の人数は20人です。

この例から分かる通り、後者のケースの方が人の移動が多くなるので、変化がなかった者の人数はより少なくなります。

この考え方でいくと、「肆」において減った20人の行き先は、「弐」と「参」のいずれかである、とすべきです。

特に「参」では、10人全てに入れ替わりがあったと考えられます。
(できるだけ多くの人の移動を想定するためです)
「肆」から10人を迎え入れると同時に、元いた10人を「壱」へ送り出した、ということです。

ところで、「壱」で最終的に増えた人数は11人「壱」のブロックから1人、退学した者がいることに注意)なので、このままでは「弐」から流入する人を受け入れるキャパは1人分しかありません。

「参」から「壱」へ移る10人の中に、退学した4人がいたと考えるとどうでしょう?

「参」から「壱」への人の移動は実質的に6人だったことになるので、残った5人分の枠に「弐」から移ってきた人が入ることができます。
これで、移動する人の数を1人から5人に増やすことができましたね。

さて、「肆」→「弐」→「壱」というルートについては、「肆」から10人が「弐」に移り、「弐」から5人が「壱」に移ったことが分かっています。
このとき、「弐」の人数は差し引きで5人増えることになり、調査結果とも辻褄が合います。

以上をまとめると次図のようになります。

最大多数の人に変化があった場合
最大多数の人に変化があった場合

結局、回答が変化しなかった者の人数は、先の59人に「弐」の30人を加えて、最小で89人です。
回答に変化がなかった者の人数がこれより小さくなることはなく、「89人以上」という記述は正しいといえます。

よって、5が正解です。

おわりに

お疲れ様でした!
いかがだったでしょうか?

一人暮らし経験の有無と留年の関係をテーマにした、数量関係の問題でした。
まず条件をもとに母集団の人数を割り出し、そこから選択肢を一つずつ検討します。
通常ありがちな唯一の解を求める問題と違い、理論上あってもおかしくないケースが複数ある中で、選択肢を吟味しなくてはならないところに難しさがあります。
前回の弁当の問題同様、記述に合わないパターンを見つけて、選択肢を否定していくのが基本的な方針となります。
本問では、検討に一番時間のかかる5が正解となっているところが何とも厄介ですね。
ただ、1〜4が全て誤りであることが分かれば、消去法で5が正解と判断することができます。
本問に限っては、真っ向勝負(=5が正しいことを確認する)より1〜4が間違いなく誤りであることを確認する方が合理的でしょう。
1〜4を否定するのはさほど難しくないので、本番ならできれば捨てないで得点したいところですね。
ただ本問に限らずですが、あまりにも方針が立たないようならひとまず別の問題に移る方が賢明でしょう。
本試験が近い方は、普段の問題演習でも常に「本番だったら」をイメージして、「解くか?飛ばすか?」の判断力を養っておいてほしいと思います。

本サイトでは、今後もこうした演習用の問題をアップしていく予定なので、ブックマークなどして気軽に訪れてもらえたらうれしいです。
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次回もお楽しみに!

略解

昨年度の調査対象者の人数を\(x\)とすると、昨年度の時点で一人暮らしの経験があった者は\(0.6x\)
一方、今年度の調査対象者の人数は\((x-5)\)なので、今年度の一人暮らし経験のある者の人数は\(0.75(x-5)\)

条件「調査結果を昨年度と今年度で比べると、一人暮らし経験のある者の人数は15人増加」より、次式が成り立つ。

\[
0.75(x-5)-0.6x=15 \\
∴ x=125
\]

よって、昨年度の調査対象者は125人、今年度の調査対象者は120人だったと分かる。

調査結果(人数)

調査結果(人数)

選択肢1について
今年度の調査対象者は120人なので、誤り。

選択肢2について
退学した5人のうち、「いずれも一人暮らし経験がなかった」4人について、留年経験の有無は不明である。
つまり、4人とも留年経験がない可能性もあるため、誤り。

選択肢3について
一人暮らし経験のある者の人数を比べると、昨年度から今年度にかけて15人増えている。
留年経験の有無は指定がないので、15人全員が留年経験のない者だった、というケースもあり得る。
したがって、「5人以下」というのは必ずしも正しくないため、誤り。

選択肢4について
留年経験の有無に変化があった者の数が最大となるケースは、退学した5人全員に留年経験があった場合である。
この場合、昨年度の50人から5人を除いた45人が、今年度に60人となっていることから、留年経験の有無に変化があった者は15人となる。
したがって、「11人以下」というのは必ずしも正しくなく、誤り。

選択肢5について
まず、昨年度の時点で一人暮らし経験も留年経験もあった40人は変化しない。
(退学した1人を除いて39人)
加えて、今年度に一人暮らし経験も留年経験もないと回答した20人も、昨年度から変化がなかった者たちだとと考えられる。
ここまでで、39+20=59人は変化のないことが確実である。

変化がなかった人数が最小となるのは、変化があった者の人数が最大となるときである。
そのようなケースとして、次図のような人数の変化があり得る。

最大多数の人に変化があった場合

最大多数の人に変化があった場合

図の白い矢印が、回答に変化のあった者の人数を示す。
これより、回答が変化しなかった者の人数は、先の59人に「弐」の30人を加えて、最小で89人である。
すなわち、「89人以上」という記述は正しい。

以上より、5が正解である。

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