取り出した数字の和が取り得る値の合計

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前回は、面接試験の受験者6人の席順を考える問題をやりましたね。
国家総合職で出題されやすい順序関係の問題なので、解いてない方はぜひ挑戦してみてください。
もう解いた方も、時間を置いて再度解き直してみることをおすすめします。
解説を読んだだけだと、理解が不十分なままで終わっている可能性が高いです。
一度自力で解いてみると分かりますが、多くの場合、解説を読んだだけだと思わぬところで手が止まる、という現象に直面します。
それこそ、自分が理解しきれていなかった箇所です。
解き直しは、こうした「分かったつもり」になっているポイントを洗い出すのに効果的です。
少なくとも1回くらいは、ゼロベースで解答を導き出す訓練が必要になります。
問題は1回解いただけで満足せず、何度も復習しましょう。
復習がバッチリな方は、本日の問題へ参りましょう!

本日の演習問題

数字が1つずつ書かれた球の入った2種類の箱AおよびBに対し、次のような操作を行う。

  1. 多面ダイス(正多面体の形をしたサイコロ)を1つ投げて出た目の数だけ、箱から球を取り出す。
  2. アで取り出した球に書かれた数字の和を求める。

箱Aと六面ダイス(立方体のサイコロ)からなるセットα、箱Bと八面ダイス(正八面体のサイコロ)からなるセットβのそれぞれに対し、アとイの操作を行う。セットαおよびセットβにおいて、イで求めた和が取り得る値の合計をそれぞれ\(S\)、\(T\)とするとき、\(T-S\)の値はいくらか。
ただし、箱AおよびBの中身は以下の通りであるとする。

箱A:1, 2, 4, 8, 16, 32が書かれた計6個の球
箱B:1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8が書かれた計8個の球

  1. 2532
  2. 2554
  3. 2570
  4. 2592
  5. 2624

サイコロの目の数だけ球を取り出して和を求める、という問題です。
「取り得る値の合計」を手際よく調べる必要があります。
以下、詳しい解説になります。
回りくどい説明が嫌な方は、一番下に略解としてコンパクトにまとめてあるので、そこだけ読んでいただくのでも大丈夫です。

それではスタート!

詳しい解説

\(S\)も\(T\)も、結局は同じような手順で求めることになると思われますが、まずは\(S\)から、順番に考察していきましょう。

知りたいのは、あくまでも球の数字の和の「取り得る値の合計」なので、「取り得る値」を列挙して計上する必要があります。
当然、地道に一つずつ挙げ連ねるのは手間ですから、論理的に、要領よく進めることが必要です。
取り出す球の個数で場合分けしましょう。

(S1)六面ダイスの目が1(=取り出す球が1個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32が1回ずつ出ると考えて、取り得る値の合計は、1+2+4+8+16+32(=\(S_0\)とおきます)です。

(S2)六面ダイスの目が2(=取り出す球が2個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32のうち、任意の2つを取り出して足し合わせることになります。
このうち、例えば取り出す数字の一方が「1」である数字の組み合わせは何通りあるでしょう?
取り出す2つの数字のうちの1つを「1」に固定したとき、他方の数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_1=5\)通りあります。
よって、球を2つ取り出したときの和の取り得る値を合計するとき、「1」は5回足されることになります。
これは他の数字(2, 4, 8, 16, 32)でも全く同様なので、この場合の取り得る値の合計は、

\[
1×5+2×5+4×5+8×5+16×5+32×5=5S_0
\]

(S3)六面ダイスの目が3(=取り出す球が3個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32のうちから、任意の3つを取り出して足し合わせます。
(S2)と同様に、取り出す数字の1つを「1」に固定して考えましょう。
このとき、他2つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_2=10\)通りあるので、取り得る値の合計の中で「1」は10回足されることになります。
他の数字(2, 4, 8, 16, 32)も全く同様なので、この場合の取り得る値の合計は、

\[
1×10+2×10+4×10+8×10+16×10+32×10=10S_0
\]

(S4)六面ダイスの目が4(=取り出す球が4個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32のうちから、任意の4つを取り出して足し合わせます。
やはり取り出す数字の一つを「1」に固定すると、他3つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_3=10\)通りです。
よって、この場合の取り得る値の合計は\(10S_0\)となります。

(S5)六面ダイスの目が5(=取り出す球が5個)の場合
ここでも、取り出す数字の一つを「1」に固定すると、他4つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_4=5\)通りなので、この場合の取り得る値の合計は\(5S_0\)です。

(S6)六面ダイスの目が6(=取り出す球が6個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32の全てを取り出すケースなので、取り得る値の合計は\(S_0\)です。

以上、(S1)〜(S6)の全てのケースを足し合わせると、\(S=S_0+5S_0+10S_0+10S_0+5S_0+S_0=32×63=2016\)

以下、今度は\(T\)を求めます。
全く同じ考え方が適用できそうですね。

(T1)八面ダイスの目が1(=取り出す球が1個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8が1回ずつ足されるので、取り得る値の合計は、1+2+3+4+5+6+7+8(=\(T_0\)とおきます)です。

(T2)八面ダイスの目が2(=取り出す球が2個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の2つを取り出して足し合わせます。
その片方を「1」に固定すると、他方の数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_1=7\)通りです。
つまり、「1」は7回足されることになります。
これは他の数字(2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)でも同様なので、取り得る値の合計は、

\[
1×7+2×7+3×7+4×7+5×7+6×7+7×7+8×7=7T_0
\]

(T3)八面ダイスの目が3(=取り出す球が3個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の3つを取り出して足し合わせます。
そのうちの一つを「1」とすると、他2つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_2=21\)通りです。
よって、取り得る値の合計は\(21T_0\)となります。

(T4)八面ダイスの目が4(=取り出す球が4個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の4つを取り出して足し合わせます。
そのうちの一つを「1」とすると、他3つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_3=35\)通りです。
よって、取り得る値の合計は\(35T_0\)となります。

(T5)八面ダイスの目が5(=取り出す球が5個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の5つを取り出して足し合わせます。
そのうちの一つを「1」とすると、他3つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_4=35\)通りです。
よって、取り得る値の合計は\(35T_0\)となります。

(T6)八面ダイスの目が6(=取り出す球が6個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の6つを取り出して足し合わせます。
そのうちの一つを「1」とすると、他5つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_5=21\)通りです。
よって、取り得る値の合計は\(21T_0\)となります。

(T7)八面ダイスの目が7(=取り出す球が7個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうち、任意の7つを取り出して足し合わせます。
そのうちの一つを「1」とすると、他6つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_6=7\)通りです。
よって、取り得る値の合計は\(7T_0\)となります。

(T8)八面ダイスの目が8(=取り出す球が8個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうちの全てを取り出して足し合わせるので、取り得る値の合計は\(T_0\)です。

以上、(T1)〜(T8)の全てを足し合わせると、\(T=T_0+7T_0+21T_0+35T_0+35T_0+21T_0+7T_0+T_0=128×36=4608\)

したがって、\(T-S=4608-2016=2592\)

よって、4が正解です。

おわりに

お疲れ様でした!
いかがだったでしょうか?

球の数字の和が取り得る値の合計値を求める問題でした。
「あり得るケースを全て列挙する」というところから、場合の数を基礎にした問題であると言うことができそうです。
解説では、組み合わせの考え方を活用して最短ルートで数え上げています。
\(S_0\)や\(T_0\)といった「かたまり」も意識すると、計算量も減らすことができます。
それでも2〜3桁同士の掛け算は避けられないので、計算ミスには十分注意しましょう。
数え上げの問題では、計算ミスもそうですが、重複や抜けがないように慎重に進める必要があります。
適宜、組み合わせや順列の計算も活用すると、手際よく計上できるでしょう。

国家総合職では、確率に場合の数の考え方を援用するケースは多いですが、場合の数単体での出題もそれなりの頻度であります。
確率の問題は場合の数が基礎になっているので、苦手な方も場合の数だけはしっかりと対策したいものです。
樹形図を使って書き出す問題からスタートして、組み合わせや順列も必要に応じて使えるようにステップアップしていってください。
本サイトでも何度か出題しているので、こちらからチャレンジしてみてください!

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次回もお楽しみに!

略解

まず、\(S\)を求める。

(S1)六面ダイスの目が1(=取り出す球が1個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32が1回ずつ出るから、取り得る値の合計は、1+2+4+8+16+32(=\(S_0\)とおく)

(S2)六面ダイスの目が2(=取り出す球が2個)の場合
例えば取り出す数字の一方が「1」であるとき、他方の数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_1=5\)通りある。
これは、球を2つ取り出したときの和の取り得る値を全て足し合わせるとき、「1」は5回足されることを意味する。
このことは他の数字(2, 4, 8, 16, 32)も同様であるから、この場合の取り得る値の合計は、

\[
1×5+2×5+4×5+8×5+16×5+32×5=5S_0
\]

(S3)六面ダイスの目が3(=取り出す球が3個)の場合
同様に取り出す数字の1つを「1」に固定すると、他2つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_2=10\)通りあるから、取り得る値の合計の中で「1」は10回足されることになる。
これは他の数字(2, 4, 8, 16, 32)も同様なので、この場合の取り得る値の合計は\(10S_0\)である。

(S4)六面ダイスの目が4(=取り出す球が4個)の場合
取り出す数字の一つを「1」に固定すると、他3つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_3=10\)通りである。
よって、この場合の取り得る値の合計は\(10S_0\)である。

(S5)六面ダイスの目が5(=取り出す球が5個)の場合
取り出す数字の一つを「1」に固定すると、他4つの数字の選び方は\({}_5 \mathrm{C}_4=5\)通りである。
よって、この場合の取り得る値の合計は\(5S_0\)である。

(S6)六面ダイスの目が6(=取り出す球が6個)の場合
1, 2, 4, 8, 16, 32の全てを取り出すから、取り得る値の合計は\(S_0\)である。

以上、(S1)〜(S6)の全てのケースを足し合わせると、\(S=S_0+5S_0+10S_0+10S_0+5S_0+S_0=32×63=2016\)

次に、\(T\)を求める。

(T1)八面ダイスの目が1(=取り出す球が1個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8が1回ずつ足されるから、取り得る値の合計は、1+2+3+4+5+6+7+8(=\(T_0\)とおく)

(T2)八面ダイスの目が2(=取り出す球が2個)の場合
取り出す2つの数字の片方を「1」とすると、他方の数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_1=7\)通りである。
これは、球を2つ取り出したときの和の取り得る値を全て足し合わせるとき、「1」は7回足されることを意味する。
このことは他の数字(2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)も同様だから、取り得る値の合計は、

\[
1×7+2×7+3×7+4×7+5×7+6×7+7×7+8×7=7T_0
\]

(T3)八面ダイスの目が3(=取り出す球が3個)の場合
取り出す数字の一つを「1」とすると、他2つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_2=21\)通りである。
よって、取り得る値の合計は\(21T_0\)である。

(T4)八面ダイスの目が4(=取り出す球が4個)の場合
取り出す数字の一つを「1」とすると、他3つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_3=35\)通りである。
よって、取り得る値の合計は\(35T_0\)である。

(T5)八面ダイスの目が5(=取り出す球が5個)の場合
取り出す数字の一つを「1」とすると、他3つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_4=35\)通りである。
よって、取り得る値の合計は\(35T_0\)となります。

(T6)八面ダイスの目が6(=取り出す球が6個)の場合
取り出す数字の一つを「1」とすると、他5つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_5=21\)通りである。
よって、取り得る値の合計は\(21T_0\)である。

(T7)八面ダイスの目が7(=取り出す球が7個)の場合
取り出す数字の一つを「1」とすると、他6つの数字の選び方は\({}_7 \mathrm{C}_6=7\)通りである。
よって、取り得る値の合計は\(7T_0\)である。

(T8)八面ダイスの目が8(=取り出す球が8個)の場合
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8のうちの全てを取り出して足し合わせるから、取り得る値の合計は\(T_0\)である。

以上、(T1)〜(T8)の全てを足し合わせると、\(T=T_0+7T_0+21T_0+35T_0+35T_0+21T_0+7T_0+T_0=128×36=4608\)

したがって、\(T-S=4608-2016=2592\)

よって、正解は4である。

コメント

  1. misorannu より:

    T=128×36=4608ではないでしょうか?

    • モクセイ より:

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通りです。
      大変失礼しました。
      その後の計算は、T-S=4608-2016=2592が正解となります。

      粗い部分もありますが、今後とも本サイトをよろしくお願いします!

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