立方体の頭上の点光源によってできる影の大きさ

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本サイト、「数的処理の穴場」を運営しておりますモクセイと申します。
記事を更新して正月休みへの未練を断ち切る!

前回は、模様のある立方体の展開図を描く問題をやりましたね。
空間図形分野の攻略には欠かせない空間把握力が試される問題になっているので、まだ解いてない方はぜひ挑戦してみてください。
もう解いた方は、時間をおいて解き直しすることをおすすめします。
解き直しをすることで、理解が足りていなかった箇所が明らかになります。
途中で手が止まったら、「なぜ手が止まったか」を明確にした上で、改めて解説に向き合ってみてください。
1回目とは異なった角度から解法を検証でき、理解が一段と深まるのを実感できると思います。
こうして様々な視点での理解を得ることで、初見の似た問題に対応できるようになってきます。
問題演習では、ぜひとも解き直しに取り組んでみてください。
きっと初見で対応できる問題の幅がかなり広がることでしょう。

復習がバッチリな方は、本日の問題へ参りましょう!

本日の演習問題

水平な床の上に、1辺の長さが\(l\)である立方体が置かれている。いま、床上にある立方体の頂点の一つを原点Oとする\(xyz\)空間(ただし、\(x, y, z>0\))を定義し、座標\((0, 0, 5)\)に、周囲を一様に照らす光を放つ点光源Pを置く。このとき、床上にできる立方体の影の面積を\(S(l)\)で表すとすると、\(S(l)\)の最大値を最小値で割った値に最も近いのは次のうちどれか。
ただし、\(l\)は\(0<l<5\)を満たす自然数とする。

高さ2の光源から立方体に光を照射

  1. 680
  2. 682
  3. 684
  4. 686
  5. 688

立方体に光を当ててできる影の大きさに関する問題です。
まずはどんな形の影ができるのかを考えましょう。
以下、詳しい解説になります。
回りくどい説明が嫌な方は、一番下に略解としてコンパクトにまとめてあるので、そこだけ読んでいただくのでも大丈夫です。

それではスタート!

詳しい解説

\(x, y, z>0\)という条件から、\(yz\)平面と\(xz\)平面は壁面になっていると考えてよいでしょう。
すると、Pの光によって床面にできる影は、次図のようになります。(こればかりは、理屈よりもイメージしてもらう方が早いかと思います)

床面にできる影の面積S(x)
床面にできる影の面積S(x)

この図において、2つの四角すいP-QRSTおよびP-OUVWは、点Pを中心とする相似な立体です。
よって、体積比は相似比から求められます。
すなわち、\((\mathrm{P-QRST}):(\mathrm{P-OUVW})={\mathrm{PQ}}^3:{\mathrm{PO}}^3=(5-l)^3:125\)

また、P-QRSTおよびP-OUVWの体積は公式から直接求めることができます。
すなわち、\((\mathrm{P-QRST})=\frac{1}{3}×\mathrm{PQ}×(\mathrm{QRST})=\frac{1}{3}(5-l)l^2\)
\((\mathrm{P-OUVW})=\frac{1}{3}×\mathrm{PO}×(\mathrm{OUVW})=\frac{1}{3}5(S(l)+l^2)\)

これらを先ほどの体積比の式に代入します。

\[
(\mathrm{P-QRST}):(\mathrm{P-OUVW})=\frac{1}{3}(5-l)l^2:\frac{1}{3}5(S(l)+l^2)=(5-l)^3:125
\]

比の関係を利用して\(S(l)\)を求めると、次のようになります。

\[
S(l)=(\frac{5l}{5-l})^2-l^2
\]

あとは\(l=1, 2, 3, 4\)を順に代入し、最大値と最小値をピックアップして比較すればいいですね。

\(l=1\)のとき、\(S(1)=(\frac{5}{4})^2-1^2=\frac{9}{16}\)
\(l=2\)のとき、\(S(2)=(\frac{10}{3})^2-2^2=\frac{64}{9}\)
\(l=3\)のとき、\(S(3)=(\frac{15}{2})^2-3^2=\frac{189}{4}\)
\(l=4\)のとき、\(S(4)={20}^2-4^2=384\)

これより、最大値は\(S(4)=384\)、最小値は\(S(1)=\frac{9}{16}\)であり、前者を後者で割った値は\(\frac{2048}{3}≒682.67\)

よって、2が正解です。

おわりに

お疲れ様でした!
いかがだったでしょうか?

固定した点光源に対し、立方体を拡大/縮小させたときの影の大小を考察する問題でした。
原題では立方体の大きさが一定のもと、点光源の位置が上下したときにできる影の大きさを比べる設定でしたが、本問は点光源を固定して立方体の大きさを変化させるようにアレンジしてあります。
アレンジしたら\(S(l)\)が分数式を含む形になり、理系の方に若干有利な出題となってしまいました汗
(どちらかといえば、数的よりも「工学の基礎」っぽい雰囲気の問題ですね)
とはいえ、細かい議論を省けば分数関数も普通の関数と同じように扱えるので、文系の方も十分に対応可能な範囲の問題だったのではないか、と思います。
なお、\(S(l)\)が単調増加であることにすぐ気づけば、\(S(1)\)と\(S(4)\)だけ計算すれば済むと分かるので、多少の時間短縮になります。
単調増加であることを調べるのと、\(l\)を全て代入してしらみ潰しするの、どちらがいいかはお好みで。

本問は空間図形を主題としていながら、解く過程では相似比の扱いを問われ、そうかと思えば後半は\(l\)を代入する計算力勝負になったり、様々な方面から数的処理の実力を計るような問題でした。
しかし、一つ一つは参考書にも載っている知識です。
それらを寄せ集めると国家総合職の過去問に行き着くわけですが、過去問レベルの難しい問題も細分化すれば必修項目に帰着する、ということはいつも念頭に置いて問題に向かいましょう。
だからこそ、解いた問題の中で似たような解法を使うものを分類して記憶することが重要になってきます。
問題演習の過程で似た解き方をする問題があったら、前に解いた問題と関連付け、整理して記憶することを心がけてみてください。
問題同士を関連付けて記憶することで、一つの問題を復習するときに同時に思い出されるので、復習の効率をアップさせることもできますよ。

本サイトでは、今後もこうした演習用の問題をアップしていく予定なので、ブックマークなどして気軽に訪れてもらえたらうれしいです。
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次回もお楽しみに!

略解

点光源Pの光によって床面にできる影は、次図のようになる。

床面にできる影の面積S(x)

床面にできる影の面積S(x)

この図において、2つの四角すいP-QRSTおよびP-OUVWは、点Pを中心とする相似な立体であることから、\((\mathrm{P-QRST}):(\mathrm{P-OUVW})={\mathrm{PQ}}^3:{\mathrm{PO}}^3=(5-l)^3:125\)

また、P-QRSTおよびP-OUVWの体積は、
\((\mathrm{P-QRST})=\frac{1}{3}×\mathrm{PQ}×(\mathrm{QRST})=\frac{1}{3}(5-l)l^2\)
\((\mathrm{P-OUVW})=\frac{1}{3}×\mathrm{PO}×(\mathrm{OUVW})=\frac{1}{3}5(S(l)+l^2)\)

よって、\((\mathrm{P-QRST}):(\mathrm{P-OUVW})=\frac{1}{3}(5-l)l^2:\frac{1}{3}5(S(l)+l^2)=(5-l)^3:125\)

これより\(S(l)\)を求めると、次のようになる。

\[
S(l)=(\frac{5l}{5-l})^2-l^2
\]

ここで、\(S(l)=(\frac{5l}{5-l})^2-l^2=(\frac{25}{(5-l)^2}-1)l^2\)
\(\frac{25}{(5-l)^2}-1\)および\(l^2\)は\(l\)に関して単調増加なので、\(l\)が5を超えない自然数のとき、最大値は\(S(4)=384\)、最小値は\(S(1)=frac{9}{16}\)である。

前者を後者で割ると、商は672である。

よって、正解は2である。

コメント

  1. 万打無 より:

    384÷(9÷16)=682.666…(=2048/3)になるので選択肢に答えが無いと思います

  2. 万打無 より:

    あともう一つ言うと「lは5を超えない自然数とする」という条件はl=5も認めていると思います。l=5を認めないなら「lは5未満の自然数とする」という条件にすべきだと思います。

    • モクセイ より:

      ご指摘ありがとうございます。

      ・384÷(9÷16)=682.666…(=2048/3)について
      こちらは最大値を最小値で割った値に「近い」数値を選ばせるつもりで問題を作ったにもかかわらず、その旨の文言が抜けておりました。
      加えて、私の計算ミスで選択肢に正答のない状態になってました。
      お詫びいたします。

      ・lの条件について
      こちらはシンプルに不等式で「0

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