ピタゴラス数

こんにちは。初めましての方は初めまして。ご覧いただきありがとうございます!
本ブログ、「数的処理の穴場」を運営しておりますモクセイと申します。

前回は、3種類の食塩が入った混合溶液を混ぜて作られた食塩水の混合比を求める問題をやりました。
とうとうこのブログも第10回目に突入しました。
が、昨日はせっかく作った記事をうっかり投稿し忘れて、早くも毎日更新が途切れたので意気消沈……
今日は気を取り直して投稿ボタンをポチッとな。
ここまでの出題がやや判断推理に偏っているのはご愛嬌。
今日も早速問題に参りましょう!

本日の演習問題

\(a^2+b^2=c^2\)…(☆)を満たす3つの異なる自然数の組み合わせはピタゴラス数と呼ばれ、有名なものとしては(\(a, b, c\))=(3, 4, 5), (5, 12, 13)がある。いま、\(a\)を1桁の自然数に限定すると、式(☆)を満たしかつ\(a<b<c\)であるような自然数の組み合わせ\((a, b, c)\)は、上述の2例を含めると全部で何通りあるか。

  1. 3通り
  2. 5通り
  3. 7通り
  4. 9通り
  5. 11通り

有名な三平方の定理に、図形的な観点ではなく整数論的な切り口からアプローチした問題ですね。
図形的な意味としては、全ての辺の長さが整数であるような直角三角形を求めよ、ということです。
ただし、今回はあくまで整数問題なので、数式による考察だけで全て解決できます。
以下で詳しく解説していきますが、回りくどい説明が苦手な方は一番下の略解まで飛んでいただいても問題ありません。

それではスタート!

詳しい解説

整数問題といえば、以下の2通りの解法が有効である場合が多いです。

  1. 取り得る値の範囲を絞り込む
  2. 因数分解して(整数)×(整数)の形にする

アについて、今の段階で分かるのは\(a<b<c\)および\(1 \leq a \leq 9\)くらいですが、これだけでは先に進めませんね。

そこで、今度はイが利用できないか考えてみます。
実は、☆印の式を変形することで、(整数)×(整数)の形の因数分解が現れます。
\(b^2\)を移項して、(二乗)ー(二乗)の形を作り出すことがポイントです。
こうすることで、因数分解の公式が利用できるようになります。

\[
a^2=c^2-b^2=(c+b)(c-b)
\]

\(1 \leq a \leq 9\)より、\(a\)はたかだか9通りなので、1つずつ代入して検証します。

\(a=1\)のとき
☆印より、\(1=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(1, 1)\)ですが、これを満たす自然数\((b, c)\)は存在しません。
よって\(a=1\)は不適となります。

\(a=2\)のとき
☆印より、\(4=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(4, 1), (2, 2)\) (なお、明らかに\(c+b>c-b\)です)
\((c+b, c-b)=(4, 1)\)のとき、連立方程式を解くと\((b, c)=(\frac{5}{2}, \frac{3}{2})\)となってしまうので不適です。
同様に、\((c+b, c-b)=(2, 2)\)のとき\((b, c)=(0, 2)\)となり不適。

\(a=3\)のとき
☆印より、\(9=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(9, 1), (3, 3)\)
\((c+b, c-b)=(9, 1)\)のとき、連立方程式を解くと\((b, c)=(4, 5)\)
\((a, b, c)=(3, 4, 5)\)は\(a<b<c\)を満たします(問題文で与えられた組み合わせですね)。
次に、\((c+b, c-b)=(3, 3)\)のとき、連立方程式を解くと\((b, c)=(0, 3)\)なので不適。

\(a=4\)のとき
☆印より、\(16=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(16, 1), (8, 2), (4, 4)\)
\((c+b, c-b)=(16, 1)\)のとき、連立方程式を解くと\((b, c)=(\frac{17}{2}, \frac{15}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(8, 2)\)のとき、\((b, c)=(3, 5)\)となり全て整数ですが、\(a<b<c\)を満たさないので不適。
\((c+b, c-b)=(4, 4)\)のとき、\((b, c)=(0, 4)\)となり不適。

\(a=5\)のとき
☆印より、\(25=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(25, 1), (5, 5)\)
\((c+b, c-b)=(25, 1)\)のとき、\((b, c)=(12, 13)\)
\((a, b, c)=(5, 12, 13)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。(問題文で与えられた組み合わせですね)。
\((c+b, c-b)=(5, 5)\)のとき、\((b, c)=(0, 10)\)となり不適。

\(a=6\)のとき
☆印より、\(36=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(36, 1), (18, 2), (9, 4), (6, 6)\)
\((c+b, c-b)=(36, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{37}{2}, \frac{35}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(18, 2)\)のとき、\((b, c)=(8, 10)\)
\((a, b, c)=(6, 8, 10)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。
\((c+b, c-b)=(9, 4)\)のとき、\((b, c)=(\frac{5}{2}, \frac{13}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(6, 6)\)のとき、\((b, c)=(0, 6)\)となり不適。

\(a=7\)のとき
☆印より、\(49=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(49, 1), (7, 7)\)
\((c+b, c-b)=(49, 1)\)のとき、\((b, c)=(24, 25)\)
\((a, b, c)=(7, 24, 25)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。
\((c+b, c-b)=(7, 7)\)のとき、\((b, c)=(0, 7)\)となり不適。

\(a=8\)のとき
☆印より、\(64=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(64, 1), (32, 2), (16, 4), (8, 8)\)
\((c+b, c-b)=(64, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{63}{2}, \frac{65}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(32, 2)\)のとき、\((b, c)=(15, 17)\)
\((a, b, c)=(8, 15, 17)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。
\((c+b, c-b)=(16, 4)\)のとき、\((b, c)=(6, 10)\)
\((a, b, c)=(8, 6, 10)\)は全て整数ですが、\(a<b<c\)を満たさないので不適。
\((c+b, c-b)=(8, 8)\)のとき、\((b, c)=(0, 8)\)となり不適。

\(a=9\)のとき
☆印より、\(81=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(81, 1), (27, 3), (9, 9)\)
\((c+b, c-b)=(81, 1)\)のとき、\((b, c)=(40, 41)\)
\((a, b, c)=(9, 40, 41)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。
\((c+b, c-b)=(27, 3)\)のとき、\((b, c)=(14, 15)\)
\((a, b, c)=(9, 14, 15)\)は全て整数かつ\(a<b<c\)を満たします。
\((c+b, c-b)=(9, 9)\)のとき、\((b, c)=(0, 9)\)となり不適。

以上から、条件を満たす組み合わせは\((a, b, c)=(3, 4, 5), (5, 12, 13), (6, 8, 10), (7, 24, 25), (8, 15, 17), (9, 40, 41), (9, 14, 15)\)の7通りなので、3が正解となります。

おわりに

お疲れ様でした!
いかがだったでしょうか?

(二乗)ー(二乗)の式変形に気づけるかどうか、が1つの分かれ道でしたね。
その後の\(a\)の場合分け以降も、一本道ではあるものの、全ての候補をもれなく正確に検証するのは結構骨の折れる作業だったと思います。
典型的な整数問題の解き方を習得するのはもちろんですが、正確な場合分けと計算を行う能力も、日々の学習の中で少しずつ身に付けていってほしいと思います。
国家総合職の数的処理では、整数問題は頻出分野の一つとなっています。
ただし、大半は解説の冒頭で挙げた2通りの方法で対応できるので、まずは易しめの問題を確実に解けるようになっておきましょう!

本ブログでは、今後もこうした演習用の問題をアップしていく予定なので、ブックマークなどして気軽に訪れてもらえたらうれしいです。
また、運営のやる気UPと記事のクオリティアップにつながりますので、ご意見やご感想などありましたら、お気軽にコメントにてお知らせください!

次回もお楽しみに!

略解

\(a^2+b^2=c^2\)より、\(a^2=c^2-b^2=(c+b)(c-b)\)・・・(☆)
以下、1桁の自然数\(a\)を一つずつ上式に代入し、\(b,c\)の値を検討する。

\(a=1\)のとき
☆印より、\(1=(c+b)(c-b)\)なので\((c+b, c-b)=(1, 1)\)
この2式を\(b, c\)の連立方程式として解くと、\((b, c)=(0, 1)\)
これは\(b\)が自然数であることに反するので不適。

\(a=2\)のとき
\(4=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(4, 1), (2, 2)\) (ここで、明らかに\(c+b>c-b\))
\((c+b, c-b)=(4, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{5}{2}, \frac{3}{2})\)なので不適。
\((c+b, c-b)=(2, 2)\)のとき、\((b, c)=(0, 2)\)より不適

\(a=3\)のとき
\(9=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(9, 1), (3, 3)\)
\((c+b, c-b)=(9, 1)\)のとき、\((b, c)=(4, 5)\)
\((a, b, c)=(3, 4, 5)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(3, 3)\)のとき、\((b, c)=(0, 3)\)なので不適。

\(a=4\)のとき
\(16=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(16, 1), (8, 2), (4, 4)\)
\((c+b, c-b)=(16, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{17}{2}, \frac{15}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(8, 2)\)のとき、\((b, c)=(3, 5)\)
\((a, b, c)=(4, 3, 5)\)は\(a<b<c\)を満たさないので不適。
\((c+b, c-b)=(4, 4)\)のとき、\((b, c)=(0, 4)\)となり不適。

\(a=5\)のとき
\(25=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(25, 1), (5, 5)\)
\((c+b, c-b)=(25, 1)\)のとき、\((b, c)=(12, 13)\)
\((a, b, c)=(5, 12, 13)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(5, 5)\)のとき、\((b, c)=(0, 10)\)となり不適。

\(a=6\)のとき
\(36=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(36, 1), (18, 2), (9, 4), (6, 6)\)
\((c+b, c-b)=(36, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{37}{2}, \frac{35}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(18, 2)\)のとき、\((b, c)=(8, 10)\)
\((a, b, c)=(6, 8, 10)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(9, 4)\)のとき、\((b, c)=(\frac{5}{2}, \frac{13}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(6, 6)\)のとき、\((b, c)=(0, 6)\)となり不適。

\(a=7\)のとき
\(49=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(49, 1), (7, 7)\)
\((c+b, c-b)=(49, 1)\)のとき、\((b, c)=(24, 25)\)
\((a, b, c)=(7, 24, 25)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(7, 7)\)のとき、\((b, c)=(0, 7)\)となり不適。

\(a=8\)のとき
\(64=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(64, 1), (32, 2), (16, 4), (8, 8)\)
\((c+b, c-b)=(64, 1)\)のとき、\((b, c)=(\frac{63}{2}, \frac{65}{2})\)となり不適。
\((c+b, c-b)=(32, 2)\)のとき、\((b, c)=(15, 17)\)
\((a, b, c)=(8, 15, 17)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(16, 4)\)のとき、\((b, c)=(6, 10)\)
\((a, b, c)=(8, 6, 10)\)は\(a<b<c\)を満たさないので不適。
\((c+b, c-b)=(8, 8)\)のとき、\((b, c)=(0, 8)\)となり不適。

\(a=9\)のとき
\(81=(c+b)(c-b)\)より、\((c+b, c-b)=(81, 1), (27, 3), (9, 9)\)
\((c+b, c-b)=(81, 1)\)のとき、\((b, c)=(40, 41)\)
\((a, b, c)=(9, 40, 41)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(27, 3)\)のとき、\((b, c)=(14, 15)\)
\((a, b, c)=(9, 14, 15)\)は\(a<b<c\)を満たす。
\((c+b, c-b)=(9, 9)\)のとき、\((b, c)=(0, 9)\)となり不適。

以上から、条件を満たす組み合わせは\(\small{(a, b, c)=(3, 4, 5), (5, 12, 13), (6, 8, 10), (7, 24, 25), (8, 15, 17), (9, 40, 41), (9, 14, 15)}\)の7通り。

よって、正解は3である。

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